桶谷法律事務所

011-281-2226

【通常のお問い合わせ】011-281-2226

24時間365日受付・初回相談無料まずはお気軽にご連絡ください

企業法務Q&A例 企業法務Q&A例

企業法務Q&A例

有給休暇の時季変更権行使の可否,有給休暇取得理由の明示等を求めることの可否

人事労務問題

繁忙期に有給休暇を取得しようとする従業員について,取得時期を変更するよう求めることは可能でしょうか。また,有給休暇取得に際して,取得理由を尋ねることはどうでしょうか。
所属部署の判断では,この従業員が業務に絶対に必要というわけでもないのですが,現在繁忙期で,他の従業員には別の時期に休暇を取得するようにお願いしているため,この従業員だけ特別扱いのように受け止められるのは困ってしまいます。

有給休暇については,使用者に時季変更権が存在します。ただし,本件では,現状のご説明を前提とすると時季変更権を行使する要件が満たされない可能性が高いと考えられます。

1 時季変更権の行使態様
時季変更権の行使にあたって,使用者は代わりの年休時季を示す必要はなく,単に指定された時季の年休を拒否すれば足ります。また,時季変更権を行使したことを明確にし,有給休暇を取得したとの誤解による欠勤を防止するために書面によって通知したほうがよいと考えます。
その際は,時季変更権の行使の要件(次の2をご参照ください。)を満たすことが従業員においても確認できる程度の記載をすることが必要です。

2 本件で時季変更権を行使できるか
時季変更権の行使に際しては,労働者の担当業務,事業活動の繁閑,予定された年休日数,他の労働者の休暇との調整等様々な要因を考慮することになりますが,使用者は労働者の希望が実現できるように配慮を行うことが求められます。
例えば,当該労働者の指定した日の労働が所属部署の業務運営に不可欠で,代替要員を確保することが困難であるといった場合には典型的に時季変更権の行使が許される場合に当たりますが,使用者の立場からすると,業務運営に不可欠な人員であっても,時季変更権の行使のためには代替要員の確保の努力をしなければならないことになります。
本件では,繁忙期にいなくても問題ないと所属長が判断していることからすると,時季変更権を行使できる場合には当たらない可能性が高いと考えます。そうすると,任意に有給休暇の取得期間を変更又は短縮するよう説得する方が無難です。

3 取得理由を明らかにさせることについて
取得理由を明らかにさせることは一般に行われています。ただし,これは①同一職場において複数の者が同じ日の取得を申し出た場合に,時季変更権行使の順序を決める目的で利用目的を問う場合や,②その日の年休付与が事業の正常な運営を妨げる(時季変更権の要件を満たしている)が,事情によっては時季変更権の行使を差し控えようとして利用目的を問う場合などには,目的があくまで時季変更権の行使に関するものとして許容されるもので,有給休暇の使用を制限する目的では許されません。
年次有給休暇は,その要件を充足することによって法律上当然に発生する権利であり,その使用に関しては,労働者の請求やこれに対する使用者の承認といった観念をいれる余地はないと解されており,その利用目的も原則として労働者の自由とされています。
そのため,利用目的を明らかにさせる趣旨が,年次有給休暇の使用を制限するためであると従業員に誤解されないように注意してください。

記事一覧

当ウェブサイトでは、サイト利用状況を把握するためにCookieを使用しています(Google Analytics、BowNow)。オプトアウト方法などの詳細は個人情報保護方針およびBowNowプライバシーポリシーをご参照ください。 当ウェブサイトの使用を続行するとCookieに同意したことになります

Copyright (c)2013 桶谷法律事務所 All rights reserved.