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中小企業の経営権争奪 中小企業の経営権争奪

ご相談事例

(※実際に体験した事例をもとにしていますが、事実関係等は大幅に改変しています。)

私には姉と弟がいます。父母はすでに亡くなりました。父は生前ABC株式会社を営んでいましたが、現在は、同社の株式を、私が1000株、弟が900株、姉が100株持っていて、私が代表取締役社長です。弟は以前はABC社の取締役でしたが、多額の会社資金を自己の株式投資に流用し大きな損害を出したため、取締役を解任しました。

ABC社は、以前は、大手家電メーカーの下請けをしており、それなりの利益を計上して配当も行っていました。しかし、その大手家電メーカーの経営が悪化し、上場廃止になって、他の家電メーカーの傘下に入ったことから、ABC社の売上が激減しました。その後は、何とか新しい取引先を開拓するなどして、復調の兆しを見せています。そうしたところ、弟から自分の保有する株式を1億円で買い取ることを求めるような手紙が届きました。しかし、いまのABC社の株式にそんな価値はありません。弟は、まだABC社が好調だった頃のイメージが残っているようなのです。

株式買取の申し出を断ったところ、弟からは、ABC社とDEF社との取引が怪しい、DEF社に利益を付け替えているといった事実無根の主張があり、その上で、会計帳簿のコピーを開示するよう求める通知が届きました。DEF社は、私とその仲間が出資して新しく設立した会社で、ABC社の下請業務の一部を行っています。DEF社に利益が若干生じていることは事実ですが、不当な金額ではなく、利益の付け替えと評価されるものではないと思っています。

これまでABC社では株主総会を開催したことはありません。弟が取締役であったときは決算書を見せていましたが、株主に開示するということはありませんでした。そのため、姉は一度も決算書を見たことはないですし、弟に対しても取締役を解任した後は決算書を見せていません。

業績は損失が続いている(ようやく当期は若干の黒字が見込めていますが、欠損の解消には程遠い状況です。)ため、ここ数年利益配当もしていません。

姉はABC社の経営に興味がなく、私と弟の紛争に巻き込まれたくないと言っています。

今後、弟との紛争はどうなっていくのでしょうか。

1.会計帳簿閲覧謄写請求(仮処分)

⑴ 準備期間など

この相談事例の事実経過からすると、弟さんから会計帳簿の閲覧謄写請求を求める仮処分が申し立てられる可能性が高いです。

仮処分が申し立てられると、裁判所で開かれる裁判期日の出席を求められます。この期日は申立人(弟)側の都合で決められ、2~3週間後に設定されることが多いです。

そのため、仮処分を申し立てられた側(ABC社)は、急いで反論書面の提出準備をして、裁判所に出席することのできる弁護士を確保しなければなりません。

顧問弁護士がいたほうがよいのは、このようなときのためです。顧問弁護士がいれば、会社の状況も把握しており、迅速に申立てに対応できます。「我が社は裁判所の世話になるようことはない」と胸を張っていても、敵対的な相手に訴えられることは十分にありえるでしょうし、裁判所への申立てを止めることは通常できません。原告(申立人)は準備ができた段階で裁判所に申し立てますが、被告側は、準備の期間もなく反論書面の提出期限を一方的に決められますので、迅速な対応が必要となるのです。それでも通常の訴訟であれば、最初の反論書面の提出まで、1か月から2か月程度、準備期間がありますが、仮処分の場合には数週間程度の準備期間しかないことが多いので、この間に信頼できる弁護士を確保することは至難の業だと思います。

この相談事例では、ABC社は顧問先ではなく、ご相談を受けたのは裁判期日の2日前でした。例えていうと、8月1日に相談を受け、8月2日に答弁書を提出し、8月3日に裁判に出席したという流れです。8月3日の予定は、日程を変更してもらったり、他の弁護士に変わってもらうなどして対応することになりました(なお、その後にABC社とは顧問契約を締結しました。)。

⑵ 仮処分の帰趨
会社法の規整
会社法433条は、3%以上の株式を保有する株主が、理由を示して会計帳簿の閲覧謄写を請求できることを定めています。
この相談事例の内容からすると、弟さんは、違法な利益相反取引が行われている可能性があることや、計算書類の開示がなされていないことを理由に挙げて会計帳簿の閲覧謄写請求を行うでしょう。会計帳簿を全面的に開示せざるを得ない状況に追い込まれれば、さらに、弟さんから、あることないこと主張されるおそれがありますので、できるだけそのような状況は避けたいところです。弟さんはABC社の大株主であることは間違いありませんので、ある程度会計帳簿を閲覧等させることはやむを得ないとしても、ABC社がコントロールできる状況で閲覧等させるべきですので、仮処分が認容される事態は防がなければなりません。
閲覧謄写請求に対しては、これを拒絶することができる場合が列挙されており、ABC社としては、拒絶できる場合に当たることを疎明する必要があります。
ABC社の反論
(幸運なことに)社長は、「株式を1億円で買い取ることを求めるような手紙」を弟さんから郵送されています。
この手紙を証拠にして、弟さんの閲覧謄写請求が株式を高値で買い取らせる目的によるもので、「株主の権利の行使等に関する調査以外の目的」(433条2項1号)や「株主の共同の利益を害する目的」(同項2号)であって、拒絶できる場合に当たると主張するべきです(そのほかに、違法な利益相反取引等がないことも主張することになりますが、この点は別途記載します。)。
仮処分の結果
仮処分の裁判期日では、裁判所から、拒絶できる場合に当たるとの心証が示されました。他方で、弟さんが大株主であることや計算書類を株主に開示していないことは違法であることは間違いがないという指摘もあり、速やかに計算書類を5年分開示すること、会計帳簿を任意に開示することで和解する決着となりました。このような内容の和解により、前記した「ABC社がコントロールできる状況で閲覧等させる」という目的は果たせたことになります。
この仮処分は、弟さんの不用意な手紙の郵送により、狙っていた枠組みで解決できましたが、紛争のレベルとしてはまだ第1ラウンドです。

2.株主総会決議不存在

3.取締役地位確認

4.不当解任の損害賠償請求

5.株式買取請求、非上場会社の株価算定手法

6.利益相反取引

7.経営判断原則

中小企業の経営権争奪問題に注力している弁護士

弁護士 洪 勝吉 弁護士 洪 勝吉

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