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旅費や手当の不正受給者に対する懲戒処分にあたって考慮すべき事情

人事労務問題

出張旅費や通勤手当を不正受給していた者がいました。諭旨退職処分(退職金の支給あり)とすることを検討していますが,どのような事情を考慮して懲戒処分を決定したらよいでしょうか。

出張旅費や通勤手当の不正受給に関し懲戒解雇等の有効性が争われた事例として次の裁判例があります。

①判決は営業所長の地位にあるものが自ら出張旅費の不正受給を行ったことについて懲戒解雇処分が有効とされた事例です。①判決の後に提訴された同一事例の別訴では懲戒解雇の有効性を前提としても退職金請求が一部認容されています。

②判決と③判決はいずれも通勤手当の不正受給に関するものですが,②判決では虚偽の住所を会社に届け出るという明らかな作為がなされたのに対し,③判決では徒歩の距離を長くするといった手段で通勤経路を偽ったにすぎず,申告していた経路自体は合理的なものであったという手段の悪質性の程度や,金額の多寡が結論を分けたものと考えられます。

不正を行った従業員の地位,不正の手段,不正の期間や回数,金額の多寡など,裁判例でも挙げられている事情を考慮して懲戒処分を決定するようにしてください。

 

①札幌地方裁判所平成17年2月9日判決

釧路営業所所長として,本来であれば部下が不正を行わないように監督すべき地位にあった者が,平成14年7月から平成15年5月にかけて,合計15回にわたる出張旅費の不正受給を繰り返し,22万6500円の社金を着服したことについてなされた懲戒解雇を有効としました。

なお,当該懲戒解雇では退職金が全額不支給とされましたが,当該判決の後に提訴された懲戒解雇が有効であることを前提とした退職金支払請求訴訟では,本件懲戒解雇事由である出張旅費の着服金額は必ずしも高額とはいえず,かつ,これらが返戻されているため会社の被った損害は大きくないこと,勤続35年の間に他の懲罰歴がなく,それ相応の功績を残してきたこと等を理由として,退職手当の3割相当額の支払いが認められています(札幌地方裁判所平成20年5月19日判決)。

 

②東京地方裁判所平成11年11月30日判決

懲戒解雇されるまでの約4年間にわたり,虚偽の住所を会社に届け出て通勤手当の支給を受け,約231万円を不当利得していた原告に対する懲戒解雇を有効としました。ただし,当該事例においては,自席を離れて業務遂行をほとんど放棄していた不誠実な勤務態度も懲戒解雇事由の一つとして認定されています。

 

③東京地方裁判所平成18年2月7日判決

虚偽の通勤手当の請求を行い,不正に定期代を受給したことを理由とする懲戒解雇について,交通費の実費が通勤手当として支給されることは認識していたが,賃金カットがなされていたため,通勤時間や徒歩の距離が長くなるという自らの負担において交通費を節約しようとしたもので,当初から不正に通勤手当を過大請求するためにあえて遠回りとなる不合理な通勤経路を申告したような,まさに詐欺的な場合と比べて,本件不正受給に及んだ動機自体はそれほど悪質であるとまではいえず,金額も34万7780円と経済的損害は大きいとはいえないし,直ちに金員を返還する準備をしていること等から,懲戒解雇処分を無効としました。

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