賃借建物からの立ち退き交渉で,家主から提案された即決和解手続に応じる義務の有無
2018.12.26
当社が賃借している建物が老朽化により取り壊されることとなり,家主から立退きを求められています。十分な金銭補償が受けられるのであれば立退きに応じることもやぶさかではなく,これまで家主と話し合いを続けてきたのですが,ある程度合意の目途がついてきた段階で,家主から「単に双方の署名押印で合意書を作成するのではなく,裁判所の即決和解手続を利用する必要がある」と伝えられました。
裁判所での手続には抵抗感があるのですが,応じなければならないものでしょうか。
即決和解手続自体は,簡単にいえば,当事者が話し合って合意した内容をそのまま裁判所が法的効力のある「和解調書」にしてくれるものに過ぎず,話合いの延長の手続なので,そこまで警戒する必要はありません。
ちなみに,ここでいう「法的効力」とは,合意の内容に違反した場合に強制執行手続をとることができるようになる,という意味であり,家主が約束通りに立退料を支払ってくれなかった場合には,和解調書に基づいて強制的に取り立てができるという利点もあります。
反対に,約束通りに退去しなかった場合には,強制執行で無理矢理追い出されるということにもなりかねませんが,御社も合意に従わずに居座るような予定はないのでしょうから,御社への実質的な不利益もないように思います。
大事なのは,即決和解を用いるかどうかではなく,むしろ,その前の段階で,きちんと経営上不利益のない水準で立退料等の条件が定められているかどうかですから,本当にその条件で移転をすることが経営上の利益につながるか,あらためて精査していただきたいと思います。