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課長職への時間外手当の支給の要否,役職手当を時間外手当に代わるものとして取り扱うことができるかどうか

人事労務問題

1.当社給与規定においては,課長以上を管理職として管理職手当を支給することになっており,管理職手当受給者には時間外手当は支給しないことになっております。
今般,ある課長から,課長が当社の管理職の地位にあるとしても,時間外手当を支払って欲しい旨の要望がありました。
課長は,当該課係にいる部下たちの人事評価,当番表作成等の労務管理を行っており,管理職手当が3万円支給されることから,課長代理以下とは職務権限にも賃金にも差があります。
当社としては,課長は紛れもない管理職だと考えているのですが,課長に対して時間外手当を支給する必要があるのでしょうか。

2.前記の事例において,課長職に対して毎月支払っている3万円の管理職手当を時間外手当の支給に代わるものとして扱うことはできないのでしょうか。

1.課長職に時間外手当を支給しないことを正当化するためには,社内的に管理職として取り扱われているというだけでは足りず,当該課長が労基法上の「管理監督者」(労基法41条2号)に該当するものでなくてはなりません。
管理監督者の判断基準は法律には定められていませんが,過去の裁判例において一定の判断基準が示されており,一般的な要件として示されているのは,以下の3点です。
① 当該者の地位,職務内容,責任と権限からみて,労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあること。
② 勤務態様,特に自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること。
③ 一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金(基本給,手当,賞与)上の処遇を与えられていること。
上記の①~③を全て満たすような従業員であれば,労基法上の管理監督者として時間外手当の支給が不要となります。
実際の判断は裁判所がケースバイケースで認定するものですが,貴社の課長職については,人事評価や当番表の作成担当だけで上記①の要件が満たされるとは言い難く,3万円の管理職手当も③の要件を満たすほどの処遇とは言い難いところです。加えて,課長職に労働時間に関する裁量権があるわけでもないとすれば,貴社のケースで課長職が労基法上の「管理監督者」として認められる可能性は非常に小さいと考えます。
そのため,課長職には本来時間外手当を支給しなくてはならないという認識に立ったうえで,当該課長の要望には真摯に対応しなくてはならないものと思いますし,根本的には人事考課の仕組みを見直す必要があるものと思います。

2.役職手当をもって時間外手当の支給に代わるものと扱うためには,役職手当を「固定時間外手当」と位置づけることになります。
しかし,会社が「時間外手当のつもりで払っていた」というだけで有効な時間外手当の支給として認められるわけではありません。固定額の手当の支払によって時間外手当が支払われたものと認められるためには,裁判例上一定の要件が求められており,一般的には以下のような判断基準が示されています。
①固定残業代制度を採用することが労働契約の内容となっていること
②通常の労働時間に対する賃金部分と固定残業部分が明確に区別されていること
③労働基準法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていること
貴社の給与規定が上記の①~③を満たすような内容になっていれば別ですが,そうでなければ,これまで支給してきた管理職手当を時間外手当に代わるものとして扱うことはできません。
また,今後の話として,管理職手当をもって時間外手当の支払いがなされたものと認めてもらうためには,就業規則または給与規程を改正し,「管理職手当は●時間分の時間外手当に代わるものとして支払う」ということを明記しましょう。さらに,「●時間を超える時間外労働がなされたときは,超過分の時間外労働について労基法所定の計算による時間外手当を別途支払う」または「労基法所定の計算による時間外手当の金額が管理職手当の金額を超えたときは,その差額を時間外手当として別途支払う」というような内容も定めておくべきです。また,規則に定めるだけではなく,実際に労働時間管理をすることも必要だと考えてください。
ただし,このような規則変更は,既に管理職手当を受給している従業員との関係では不利益変更となり得るものであり,不利益を受ける従業員全員から同意を得ない限り,規則変更の有効性は容易に認められませんので,ご留意ください。

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